和尚の雄道です、こんにちは。
福井県の福井市と大野市の境に「飯降山(いぶりやま)」という標高884.3メートルの山があり、ここには伝説があります。
泰澄(たいちょう)大師という偉いお坊様が、修行をしていたら、それを手助けするように、天から飯が降ってきたという伝説。
不思議な話ですね。
昔から伝えられてきたのでしょうけれど、さらにこの地には別の伝説が残っております。
「昔、三人の尼さんが山に入って修行をしていました。
山には住む家もなく、殺生も禁じられているので、食べるものと言えば草や木の実などでした。
三人は励まし合いながら、助け合って過ごしていました。
中でも一番年上の尼さんは、笑顔の素晴らしい方で、信仰に生きるとはこんなに素晴らしいのかと感心するほどでした。
ある時、不思議なことに空からおにぎりが3つ降りてきました。
きっと、自分たちの日頃の精進のご褒美として、神様がお恵みくださったのだろうと考えて、感謝してありがたく食べました。
それからも毎日毎日、空からおにぎりが降ってきました。
しかし、一人1個のおにぎりだけでは物足りなくなり、もっともっとおにぎりを食べたいと考えるようになりました。
ある時、年上の尼さんがもう一人の尼さんと結託し、二人で年下の尼さんを殺しました。
これで「おにぎりの分け前が増えるハズ」とワクワクしながら、おにぎりの降る場所へ行ってみると、その日からおにぎりは2個しか降ってこなくなりました。
やがて、もう一人の尼さんが仲間の尼さんを殺したことを悔いるようになりました。
一番年上の尼さんは、その尼さんを殺しました。
「これでおにぎりを独り占めできるかもしれない」と、おにぎりの降る場所へ行ってみると、それ以来おにぎりが降ってくることはありませんでした。
年上の尼さんは、飢えてよろよろになって山を下りました。
こういった話から、この山を「飯降山」というようになりました。」
まんが日本昔話~データベース「飯降山」
泰澄大師は、その握り飯に励まされ、修行し多くの人を助け、「越(こし)の大徳」として慕われました。
尼僧さんは、ご飯を独り占めしようとし、修行仲間を手にかけてしまいました。
欲とは恐ろしいものです。
これは伝説ということではありますが、決して昔の話ではなくて、今ここ現在の話です。
「こんな悪い尼さんがいたんですよ。」という話ではなく、
人間にはこのような一面があるという指摘であると思います。
多くの人が泰澄大師を志し、尼僧さんを否定するでしょう。
しかし、いざ状況が変わり、自身が追いつめられると、この尼さんのような自分本位の道を歩んでしまうのが人間であることも事実です。
最近の世情を観ていると、「人の業」について考えさせられることが多いです。
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