やけ土の
ほかりほかりや
蚤さはぐ
≒ 焼け土がホカホカ温かなもんで、蚤が喜んでいるよ。
さて、これは小林一茶 (こばやしいっさ) の句です。
皆さんこの俳句に触れてみて、どう感じられるでしょう?
私は特に何も感じませんでした、
むしろ、どういう意味?となりました、始めは。
どうも調べていくと、
当時、一茶の長野県にあった自宅は、
「柏原の大火」という大火事に巻き込まれ、
土蔵以外全焼し、
その蔵の中で一茶は一人で生活をしていたとのことなのです。
やけ土というのは、火事で焼けた土で、
ホカホカと熱がまだに残っているので、
蚤たちがにぎわっている。
という事を詠っているんですね。
自分事であればどう感じるでしょうか?
先祖から受け継ぎ、護ってきた生家が燃え落ち、
蔵だけがかろうじて残った、
そして自分は、その蚤だらけの土蔵の中で過ごしている。
かなり過酷な状況。
むしろ絶望的と言ってもよいのかもしれません。
しかし、一茶ははというと、呑気なものです。
因みに、その火事の半年後に一茶は亡くなります。
常に明るく、陽気に生きていく事は、たやすい事ではありません。
そうするには、人生には多種多様なの事が起こりすぎます。
一茶は、三人の子と妻と死別しております。
長女を見送った時に詠んだ句が下の句です。
露の世は
露の世ながら
さりながら
≒ 露のような儚い世の中である
儚い世の中ではあるのだけれども。。。
(どうしても、それを受け入れきれない)
悲痛な句です。
ここで改めて、
やけ土の ほかりほかりや 蚤さはぐ
の俳句を味わってみると、妙に明るい様に感じるのです。
身に降りかかる不幸さえ、
楽しみながら陽気に受け入れている一茶の姿が
まざまざと浮かび上がってくるのです。
何度となく出会ってきた不幸な出来事を乗り越えて、こういった境地に至ったのでしょう。
まったく、
自分の血を吸い、痒みをもたらす蚤たちにさえ、慈しんでいる様な気持ちに、一体どうやったらなれるのか?
暑い日差しに負けぬ様、久しぶりに手に取った小林一茶の俳句集。
二百年以上たった今もなお、心を揺さぶる小林一茶という俳人。
まだまだ私の人生の中で、何度も助けていただくことでしょう。
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