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棚経の思い出(上)

更新日:2020年6月29日



若和尚の雄道です。

泉龍寺では、毎年夏にお檀家さん宅にお邪魔して、夏のご挨拶を申し上げ、仏壇前でお経をあげさせて頂いております。

しかし、このコロナの状況下です。

どうしても例年通りに、行うことは困難であると判断致しまして、今年は、玄関先での暑中の挨拶のみにさせて頂くこととなりました。

暑い中ではありますが、お檀家さんのお家にお参りさせていただき、皆さんのお顔を拝見するのはとてもありがたく、住職も私も楽しみにしていたのですが、状況を考えますと致し方ありません。

ご理解ご協力お願い申し上げます。


さて、夏の棚経は他にも様々なお寺で行われております。

そして、お寺さんによっては、住職さんだけではまわりきれないため、お手伝いの和尚さんをお願いして夏のお経をおつとめします。

ある年の夏、私も他のお寺さんにお手伝いに伺い、棚経をまわっておりました。


物腰の柔らかな一人暮らしのおばあさんのお宅でした。

お経をあげ、お茶を頂いている時、ふいに真剣な面持ちで、「実は相談があるんです。」とのこと。

思いつめた表情にやや圧倒されながらもお話を伺いました。


そのお宅の隣は、同じくこのおばあさんの持ち家で、今は家族がいないので空き家になっておりました。

しかし、最近ではその家に、誰か知らない男の人が住みついてしまい、自分一人では怖いから、追い出して欲しいとのことでした。

そのことは、以前にもお手伝い先の住職さんにも相談しており、その際にはその男性と話をしてもらったとのことでした。


これは、警察に通報するべき事案ではないかとお伝えしますと、警察では取り合ってくれない、とにかく住職さんにお伝えしてほしいということでした。


お手伝い先のお寺に戻り、早速住職さんに事情を説明しますと、そうか、じゃあ今すぐ行くからついて来てくれ、とのこと。

多少不安に思いながら、黙って見ていてくれればいいからという住職さんについて、おばあさんの家の前に到着しました。

するとおもむろに住職さんは着ていた衣を脱いで、紐を出して、着物の裾を上げてタスキがけにし、頭にねじり鉢巻、どこから持ってきたのか手に棍棒と、時代劇の討ち入りの様な出で立ちになりました。

呆気にとられている私を尻目に、住職さんはおばあさんの家に入っていき、

「いまから、隣の奴を俺がいって追い出してくるから、安心してな。このでかい和尚さんの傍にいれば安心だから、家の鍵をかけて静かにしている様にな。」

といって、おばあさんと私を残して、玄関を出ていかれました。


これは、大変なことになったと、家の鍵を閉めますと、お隣の家から住職さんの「何やってんだ」といった怒号が響いてきました。


(次回に続く)



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