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棚経の思い出




住職の雄道です、こんにちは。


お盆真っ只中ですね。


台風の到来で一層の慌ただしさを感じておりますが、

どうか被害の出ませんことを祈るばかりです。



おかげさまで、盆棚経も無事におつとめが叶いそうで、

ホッと胸を撫でおろしております。


今年は、コロナ以後初めて各お檀家さんのお宅に上がらせていただき、お仏壇の前にお線香を手向け読経させていただきました。


ところで、棚経の準備は中々大変です。


「何月何日の何時何分頃お参りします」

というハガキにて、事前にご通達申し上げるわけですが、

お葬儀が入ったり、どうしても外せぬ御用が入ると、

予定変更のご連絡から始まって、全てを計画見直す必要が生じます。


無事に棚経当日をむかえるまで、ハラハラドキドキしております。


一方で、実際の棚経回り自体は、私の好きなおつとめごとの一つです。


住職としてのお勤めごとに、甲乙を付けるべきではないかもしれませんが、実際にあるのだから仕方ありません、ご海容願います。


改めて考えてみますと、菩提寺の和尚とは言いながらも、他人を家に招きいれ、ごくごくプライベートな空間にある、仏壇まで当たり前の様に通して下さる。


ありがたいことだと思います。


お経を一緒に唱え、お家によっては、お茶を御馳走して下さったり、共に会話を楽しむ機会をいただく事があります。


目上の方からは、その長い人生経験からの幅広い価値観を学び、

同年代の方からは、その価値観に強い共感を受け、

私よりもずっと年若の方からは、全く予想だにしない新しい価値観を吸収させていただく。


様々なお檀家さんのそれぞれの生き方に触れることが出来るのは、

僧侶だからこそ出来る、貴重な体験。


修行時代を含めますと、随分多くのお宅にお邪魔して参りましたが、今でも忘れられない棚経の記憶があります。


大学四年生の時でした。


当時、卒業と共に、僧侶としての修行へと向かう心を決め、

夏の棚経として、泉龍寺のお檀家さんの元へ、

お経本を持ち、慣れないながらも回らせて頂きました。


あるお宅に地図を見ながらたどり着き、

家主である一人暮らしのおばあさんが迎え入れて下さいました。


「何?お寺の息子さん?

あ、お経ね!どうもご苦労様。暑いけどよろしくねぇ。」


実に丁寧にご挨拶いただき、奥の仏壇にお通し頂いたわけですが、

一点だけ他のお宅とは異なっている点がありました。


おばあさんはトップレスでした。

ざっくばらんに言えば、上半身真っ裸だった。


ギョッとしました。


頭の中には、大量の?マークが。


上着を着忘れているのか!?


お相手のあまりにも自然な対応に気圧されてしまって、ご指摘も出来ず、

なぜか「こちらが狼狽えている事を気取られてはいけない。」

という気持ちに囚われながら、

平常心を装い、

それでも震える手でお線香に火を点け、

おそらく顔を真っ赤にしながらお経を読み進めます。


私の隣では、おばあさんが実に真摯な姿勢で合掌し、眼を閉じてお経を聞いておられます。

上半身裸で。。。

揺れている。。。


混乱した頭で、どうにか、こうにかお参りを終え、

逃げる様にお宅を後にしました。



暑い夏の記憶と共に、当時心の乱れを思い出し、

自身の狼狽え具合が恥ずかしくなる時があります。



何はともあれ、

初めての棚経が、衝撃的なものでありましたので、

おかげさまで、多少の事では驚かなくなりました。


様々な人々との出逢いによって、少しずつ磨かれている毎日です。


棚経だけはでなく、様々な方とお逢いすること、

楽しみにいたしております。





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