ついに行く道
- 住職
- 5月1日
- 読了時間: 4分

つひにゆく 道とはかねて 聞きしかど 昨日今日とは 思はざりしを
という歌がある。
「最期には行く道だと聞いてはいたが、それが昨日や今日とは思わなかった。」
と言った様な意味になるでしょうかね?
日本史上、一二を争う超絶イケメンとして
在原業平(ありわらのなりひら)という人の歌です。
平安時代を生きた業平、彼にはモテる要素しかない。
まずこの業平、見た目や体つきが上品で、美しい。
一目その姿を見た人が、恋焦がれるあまりに命を落としたとか、
とにかく殺人的な美貌だった!(らしい)
加えて血筋が良い。
血統主義で、家柄が大事。
そんな中、おじいさんが天皇!
現在の象徴としての天皇ではなく、
最高権力者であった時の天皇。
地位も富もあるサラブレット。
更に、世間の常識にとらわれない自由人!
細かいことにウルサイ人間は嫌われます!
私もチューブの歯磨き粉を最後の最後まで使いきるとか、
みみっちいの事にこだわりを持つ男ですが、
残念ながらそう言う人物はモテません。
一方で業平は全く気にしない。
どのくらい気にしないのかというと、
天皇の婚約者にお近づきとなり、挙句に駆け落ちします!
業平気にしなさすぎでは?
心配になりますが、
女性は、そういう男に憧れるという現実、確かにあるのです。
最後にダメ押しで、
当時、異性を口説く手段は和歌だった。
業平は和歌がうますぎた!
現代では、メールやline、SNSで
令和男子「付き合って!」
令和女子「いいよ!」
で決着がつく。らしい。知らんけど。
一方、平安男子(貴族)は、幾多の困難乗り越えて、女性と結婚します。
STEP1:
結婚適齢期を迎えた娘さん達の情報を集める。
できる限りたくさん。
なぜなら情報通でないと、そもそも女性と出逢えない。
町ブラとかしてない!
平安女性は引きこもり!(いいすぎ)
STEP2:
噂を元に眼を付けた女性にラブレター代わりの和歌を送る。
STEP3:
女性側は、届いた和歌を受け、その男の身辺調査を行う。もちろん一家総動員で。
下手な和歌を送ると、馬鹿にされ、
「あいつこんな和歌送ってきたんだよ。」とか言う噂を流される。
何とか、両親や周り者達から認められ、GOサインが出ると、お仕えしている者が和歌を返す。姫、いまだ出てこず。
STEP4:
本人たち同士での和歌のやり取りスタート!
中々すぐに返事が来ないのでお互いにドキドキ。
互いの思いは募るばかり。
STEP5:
そいて、ついに、いよいよ、男性が女性宅を訪ねて行き、結ばれる。
STEP6:
んで、三日通うと結婚。フィニッシュ!
はやっ!ここでいきなり早い!
平安時代に結婚相談所があれば、必ず言われることでしょう。
「結婚するには和歌です。」
業平は平安時代を代表する和歌の名人です。
和歌がうま過ぎる六人を、
六歌仙(ろっかせん)と呼びましたが、その一人です。
そりゃモテますよ!
モテにモテて、生涯で、3733人の女性と恋におちたとか!
開い開いた口塞がりません。
それはさすがにモテすぎです。
一日一人と恋に落ちて、十年は掛かります。
まぁ誇張があるのでしょうが、モテたのは事実。
そんな人物が、歳を重ね、体力が衰え、自らの死をさとって詠んだのが上記の歌です。
つひにゆく 道とはかねて 聞きしかど 昨日今日とは 思はざりしを
六歌仙と歌われている割には、飾り気のないストレートな和歌に見えます。
「いつかは死ぬとは聞いてたけど、それが昨日今日とはね。」
意味そのまま過ぎませんか?
けど、その率直な所に、心の底から感情を吐露している様にも感じます。
「真理」を辞書で引くと、「誰も否定せず、変わることの無い道理」と出てきます。
この歌にも「真理」があるのではないでしょうか?
それは、どんなに人から羨ましがられる境遇に見えてもかわらない事実。
多くの人間が、死を前にして抱く思い。
在原業平公の飾らぬ姿に、改めて
「この人モテただろうなぁ~。」と思いを巡らすのですが、
果たして幸せな人生だったのでしょうかね?
皆さんはどう思われますか?
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