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落雁の味わい





和尚の雄道です、こんにちは。


以前、友人僧侶と二人で、お世話になったお寺へ御礼に伺いしました。


玄関でご挨拶申し上げ、本堂に進み、お線香を手向けてご本尊様にお参りした後、

客殿にて、住職さん、副住職さんと共にお話をさせていただいた時のこと。


「どうぞ召し上がれ。」

とお茶と和紙に包まれた落雁(らくがん)が私たちの元に運ばれて参りました。


私は、「いただきます」とお茶を一口。


一方で日頃から話好きの友人は、その日も絶好調の話術をご披露しながら、

落雁の包みを開けております。


そこでふと、違和感が。


彼の手元が不自然に動いた様に見えたのです。


「?」を頭に浮かべる私の前で、住職との話に夢中の友達は、取り出した落雁を口に運び咀嚼し、のみ込み、今度はお茶に手を付けております。


首をかしげながら、目の前にある落雁をジッとみつめる私。


「。。。!」


落雁を包む和紙が動いてる!


血の気が引いていく。


中に生き物がいる!!


勇気を出して対応る恐る包みを落雁の開けていくと、

ウジ虫が!二匹!!ウニョウニョしてる!!!

気持ち悪っ!!!!ヒェ~~~!!!


そこに投げかかる、

「遠慮せずにお菓子食べてね」

との住職さんの声。


私が落雁を凝視しているのを見て、遠慮をしてるのかと思われたのでしょう。

その温かい声のトーンが、より一層私を追い詰めます。


どうする?

伝えるか?


「落雁にウジが湧いています」、と。

とても言えない。


そもそもこれまで沢山お世話になったからこそ、

今日はわざわざ時間を作っていただき、我々は伺っている


指摘すれば、相手の顔を潰してしまう。


しかも、隣の友人はもう食べてしまっている!( なんでお前気づかないんだよ!)

相手にかなりの心の負担をかけてしまう!


ここは、私の対応次第で、状況が変わるな。

ああ、住職さんも副住職さんもこちらを見ている。

私が食べるのを見ている。

これ以上時間を掛けたら不信感を与えてしまう。

結論を出さねば。


胸の内で、「南無三!!!」と唱え、

ウジ虫を避けて、口へ放り込み、丸呑みにする。


文字通り、一人で全てを呑み込むということで決着。


お茶とお菓子を食べただけで、汗びっしょりで目を白黒させている私を、

不思議そうな顔をして見るお三方、

それに、引きつった笑顔で返す私。


その後、自宅に帰るまでの友人が運転する車中。

友人に伝えておこうかと考えましたが、

「こいつおしゃべりだからなぁ。」と踏みとどまり。


帰宅後は、メイガというよくお米につく蛾の幼虫であり、食べても体に害はないという事実を確認し、ホッと胸を撫でおろしました。


あの時、どうすれば正解だったのか?

もっと良い手だてがあったのか?

いまだに答えは出ておりません。


ただ、泉龍寺では、落雁の保存を冷蔵庫で行うことを徹底しております。

もし、ご来山の折には、ご心配なくお召し上がりください。




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